軽症糖尿病の治療

軽症糖尿病の治療

目安として、HbA1c<8%、空腹時血糖値<150mg/dl,食後血糖値<250mg/dlを軽症として扱うこととする。このような軽症糖尿病に対してもかつてはSU薬を用いていたのだが近年は他の経口血糖降下薬を用いることが多い。

 

肥満によるインスリン抵抗性増大例

BMIが25を超えて軽症糖尿病である場合、肥満によるインスリン抵抗性による可能性が高いと考えられる。そのため肥満の解消が最優先事項となる。そのためには食事療法、運動療法が重要なのは言うまでもない。そして経口血糖降下薬を用いるのなら肥満を助長しない薬であることが望ましいと考えられる。その後の治療効果判定が難しくなるからである(たとえば、血糖値は下降傾向になったが太りましたという結果にしても、改善傾向ではない可能性がある。)。インスリン分泌促進薬は副作用として体重増加がよく知られているため、この時点ではふさわしくないためそれ以外の薬を用いるべきである。体重に対する影響としてはビグアナイド薬が不変から減少傾向、αGI薬は不変、チアゾリジン誘導体は効果が出る場合は浮腫の副作用以外に体重が若干増加する傾向が知られている。

以上のことを踏まえるとまずはビグアナイド薬、塩酸メトホルミン(メルビンR)からはじめ、副作用の胃腸障害によって服薬困難であればαGIやチアゾリジン誘導体に切り替える。また心不全の既往があればメルビンR、アクトスRともに適応外となるためベイスンR、グルコバイRといったαGIを処方するという流れが考えられる。但し、適応外さえ守ればこれらのくすりはどれを使ったから明らかに悪いということはない。定期的にフォローアップし、効果判定をしていくことが大切である。特にアクトスRは全く効果がない場合もある(量が足りないのかといったところで悩む)ので、思い切った変更が必要である。

やせ型、インスリン分泌低下による食後高血糖例

こういった症例も1990年代はSU薬での治療が主流であった。作用機序からも明らかであるように食後高血糖(インシュリンの追加分泌の初期分泌能の低下)はαGIや速効型インスリン分泌促進薬スターシスRやグルファストRがよい適応となる。SU薬はインシュリンの基礎分泌を高める薬であり、追加分泌を促す作用はない。そのため食後高血糖が低下するように基礎分泌をあげてしまうと空腹時に低血糖となり、空腹感を覚え過食となり治療がうまくいかないこともあった。歴史的にはこういった背景もあり、速効型インスリン分泌促進薬スターシスRは販売開始となったのだが、皮肉なことにこのような血糖値のパターンの患者でもSU剤にてコントロール良好となった例ではスターシスRやグルファストRは効果があまり良くないといことが明らかになった。そのためスターシスRは当初、現場では効かない薬と思われていた。2008年現在は血糖値の変化パターンは同一だがスターシスRが効果的な場合とSU薬が効果的な場合が存在し、治療を行うまで区別することはできないと理解されている(実際には食事、運動療法が全くできていない効果がないことも多々あり、生活習慣病治療の難しいところである)。

以上のことを踏まえるとこういった症例では第一選択としてスターシスRを用いて、効果不十分ならばスターシスRとグルコバイR、ベイスンRの併用療法、それでも効果がなければ薬効が低めのSU剤、具体的にはグリミクロンRを用いるといった方法が考えられる。

注意すべきことはほぼ同じ作用機序であるにも関わらず、SU薬はインシュリン基礎分泌のみを上昇させ、ナテグリニド(スターシスR)はインシュリン追加分泌のみを上昇させる。基礎分泌と追加分泌両方が足りないということは多々あるのだが、保険診療上SU薬とナテグリニドの併用は認められていない。併用したいときはナテグリニドをαGIで代用することとなっている。

 

 

wikiぺディアより引用

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