経口血糖降下薬とは
経口血糖降下薬(OHA : oral hypoglycemic agent)とは2型糖尿病において血糖値を正常化させることで慢性合併症のリスクを軽減させる目的にて処方される薬物の総称である。1994年までは米国でも使用できた薬物はインシュリン分泌促進薬のみであったものの、2008年現在、日本ではインシュリン分泌促進薬、速効型インシュリン分泌促進薬、ブドウ糖吸収阻害薬、インシュリン抵抗性改善薬という4種類の薬物が入手可能である。
インシュリン分泌促進薬としてはスルフォニルウレア剤(SU薬)、速効型インシュリン分泌促進薬としてはフェニールアラニン誘導体、ブドウ糖吸収阻害薬としてはαグルコシダーゼ阻害剤(αGI薬)、インシュリン抵抗性改善薬としてはビグアナイド剤(BG薬)、チアゾリジン系誘導体(TZD薬)が知られている。
1998年イギリスでUKPDSという大規模比較試験が行われて以来、糖尿病慢性合併症予防目的にてこれらの薬は用いられている。特にインスリン分泌が残存している2型糖尿病のインスリン非依存状態において有効である。2型であっても、重篤な感染症の様にインスリン需要の多いとき、清涼飲料水ケトアシドーシス(ペットボトル症候群)の様に分泌を上回るブドウ糖摂取があるとき、周術期や妊娠などはインスリン治療が必要である。
適応は得ていないが、BG薬やαGI薬による境界型糖尿病の糖尿病型への進展予防効果が報告されている。
wikiぺディアより引用
インシュリン分泌促進薬
ビグアナイド系(BG薬)
肝臓に作用して糖新生を抑え,筋肉での糖の取り込みを促進、さらに腸管でのブドウ糖吸収を抑制すると考えられている。詳細な作用機序は不明であるが、分子標的はAMP依存性プロテインキナーゼ(AMPPK)と考えられている。インシュリン抵抗性改善薬であるので、体重は不変から減少傾向となり、食事療法の妨げにならない。かつて副作用である乳酸アシドーシス(乳酸ピルビン酸が蓄積しやすくなるため)に対する懸念からあまり用いられることはなかった。しかし、実際は乳酸アシドーシスの頻度は低いことが英国でのUKPDSでの再評価によって判明した。乳酸アシドーシスを起こしやすい病態、すなわち、肝障害、腎障害、心障害の既往がある患者には使用をさける。塩酸メトホルミンが主流である。塩酸ブホルミンは塩酸メトホルミンに比べて薬効が低く、乳酸アシドーシスを起こしやすいといわれている。2008年現在、インスリン抵抗性のある患者に広く使われるようになりTZDとの合剤も海外では販売されている。
その他の問題点は軽度の胃腸障害であるが、これは一時的なもので少量から開始し、ゆっくりと漸増すれば軽減できる。
発熱時、下痢など脱水のおそれがあるときは休薬する。ヨード造影剤使用の際は2日前から投与を中止する。
チアゾリジン系(TZD薬)
PPAR-γ(ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体γ)作働薬やインスリン抵抗性改善薬とも呼ばれる。核内受容体のひとつであるPPAR-γに結合し、インスリンの抵抗性を悪化させる様々な因子の転写調節をする。主として末梢組織のインスリン抵抗性改善にあたる。有効性及び安全性に性差を認め、女性で浮腫を来し易い一方で、小用量で血糖降下作用を見る事が多い。脂肪細胞に作用しブドウ糖の取り込みを増やす事で血糖が低下する。その代わり肥満を助長しやすくなる。塩酸ピオグリタゾン(商品名:アクトスR)だけが現在、国内で上市されている。最初に商品化されたトログリタゾン(商品名:ノスカールR)は肝障害の死亡例が相次ぎ、その原因の一つとして肝臓での薬の代謝に関わるグルタチオン抱合酵素GSTT1とGSTM1の変異が重なると特に副作用の発症率が高い事が示された。類薬ではトログリタゾン程の肝障害は報告されていないが留意して使用するのが望まれる。副作用として浮腫や貧血を合併することがあるが、腎でのインスリン感受性亢進のため、Naの再吸収を促進するためだといわれている。脂肪細胞を分化誘導する一方で骨芽細胞の減少により骨折のリスクが増加するのではないかと云われている。
副作用に浮腫があるために心不全の既往がある患者には禁忌となる。肥満が顕著な例や女性では効きやすい傾向があるが、効く例、効かない例がはっきりと分かれるのが特徴である。4〜8週後に効果判定し、効果がなければ中止するべきである。浮腫が出現しなくとも効果が出ると体重が増加する傾向があるため、食事療法のコントロールに気をつける必要がある。
大血管障害の既往を有する2型糖尿病患者に対して、心血管イベントの発症の抑制、およびインスリン治療の導入を遅らせるという欧州での成績がある。